ドアノブおじさん
私のマンションにドアノブおじさんが住んでいる。
勝手に心の中でそう呼んでいるだけだけど。
ドアノブおじさん___スーツを着こなした髪の薄い男性__は毎朝304号室の玄関のドアノブに手をかけたまま離せないでいる。たぶん精神の歯車が狂っているのだろう、私が朝出かける時はだいたいいつもドアノブを握っていて夜にはもういない。
スーツを着ているということは会社勤めだろうか?彼は何時ごろにドアノブを離すのか?そしてドアノブを離した後、彼は会社に行くのか?それとも家に戻るのか?
やろうと思えば夏休み、毎朝30分ずつ家を出る時間をずらしてドアノブおじさんのことをもっと知ることは可能だ。
でもなんだかそれはしてはいけないことのような気がする。ビミョーな後ろめたさがある。うーん。
願わくばおじさんが幸せになれますように。私と一緒に幸せになりましょう。
別にプロポーズとかじゃあないです。